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「ファイトクラブ」【それは破壊・暴力・石鹸の映画】

 
「一番好きな映画は?」
 
という質問は、多少なりとも映画を好きな人間にとってはすごい困る質問でしょう。
 
相手がどこまで映画に詳しいのかにもよるし、かと言って気を使ってミーハーなものすぎても会話は広がらない。
 
好きな子が相手なら
「見たことないの?じゃあ一緒に見よう!」
といえる程度の作品でなければならない。(そんなことはない?)
 
映画に限らず、音楽にしてもそうですが、こういった類の質問にはその場に応じて、ころころと答えを変えてしまいがちです。
 
そういったメンドウな配慮を棚に上げたうえで、僕が「好きな映画は?」と聞かれたとしたら、何と答えるか。
 
YES!!
I LOVE「ファイトクラブ」!!
 
知ってる人も多いはず。超有名作品。
先日友人が見ていたく感動したとの知らせを受けたので、超有名作品ですが、今更ながら紹介しようと思います。
 

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監督は鬼才ディビット・フィンチャー監督、主演ブラッド・ピット(正確には主演じゃないけど)という最強タッグで描かれる本作。公開は1999年。
 
実は、「ハーモニー」や「虐殺器官」といった作品で昨今話題の人とあるSF作家の伊藤計劃さん(残念ながらもう亡くなられている)が生前に自身のブログでこの作品を絶賛していました。
 
 
 ひとりひとりの、かけがえのない命と皆はいう。でも、ぼくらは唯一無二の美しい雪のかけらなんかじゃない。かといってごみくずでもない。ぼくらはぼくらだ。でも今や都市が世界を覆い、個々の存在は無に等しい。個人主義が進行するほどに、どういうわけかぼくらは個人の無力をより一層痛感する。
 ぼくらは財布の中身じゃない。ぼくらは仕事じゃない。ぼくらはスウェーデン製の家具なんかじゃない。でも今、ぼくらはまさにそのすべてでもある。物に囲まれて都市に生きるぼくらは、ほんとうの痛みをいつのまにか忘れている。神経性の痛みばかり抱え込んで、傷つけ、傷つけられることによってぼくと君とを分かつ、その痛みを忘れている。痛みも他者も、いまやすべてが頭のなかにある。
 そんな時代を笑い飛ばしつつ、ラストにささやかなラブ・ソングを歌う、20世紀最強最後の凶悪な詩。20-30代の立ち位置を確認する、「年齢の高い」若者のための映画「ファイト・クラブ」。私のオールタイム・ベスト10の一本です。
 
 
<あらすじ>
 
タイラーはぼくに銃を突きつけ、その指はいま引き金に掛かっている。
タイラーとぼくは旧知の間柄だ。
タイラーが何をしたのか、ぼくはすべて記憶している。
だからぼくが話そう、ぼくらとぼくらの住まう世界の話を。
 
ぼくは車のリコールセンターで働く気弱なサラリーマンだった。これといった趣味もなく、お金には不自由ない生活をしていた。しかし、いつしか生きる意味を失い不眠症になってしまったぼくは、あるきっかけから重病を抱えた患者たちの「支援の会」に顔を出すようになった。
そこには、死と隣り合わせになった病人が泣きわめく姿があった。
各人の社会や人生への怒り・悲しみを嘆く姿があった。
「僕は彼らとは違う。そうじゃない。僕は"生きている"。」
ニセ患者を装い、苦しむ彼らを見ることで、ぼくは生きている実感を得るようになった。
しかし、その幸せな生活も長くは続かなかった。
僕の家が突如火災により全焼したのだ。
マンションの一室だった。
行く宛のない僕は、先日の出張の際、飛行機で隣に座った石鹸売りの男タイラー・ダーデンに助けの電話を掛けた。
今思えばなぜそうしたのかわからない。
彼は気前よくバーで酒をおごってくれた。
なぐさめもしてくれた。満足だった。
しかし、帰り際に彼の言葉に僕は度肝を抜かれた。
思えば、あれがすべての始まりだった。
 
「泊まるところもないんだろ。家に泊めてほしいか。いいぞ。ただ一つ条件がある。俺を殴れ。力の限りな。」
 

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「か、かっけ〜〜〜〜〜。」
 
この作品はあまりテレビで放映されることはないです。
理由は幾つかあって…
一つは暴力的すぎるから。
もう一つは下品すぎるから。
 
とはいえ、これは最高の映画。
 
断言していいでしょう。
 
この作品のポイントはなんといっても特有の「速度感」なんです。
とにかく無駄がない。
必要なコマを最低限、最速で。
それは、どういうことか?
ストーリーの良し悪し以上に、伝えたい「何か」が監督にあるのです。
では、それは何か?
消費社会で、自分を見失い、ただ社会の歯車と化し、そのことに何の恐怖も痛みも感じなくなってしまった現代社会の生きるしかばねたちへの怒り、そのもの。(うわー、それっぽい。)
 
作中でのタイラーのセリフの端々にその感情が感じ取れます。
 
「職業がなんだ?財産がなんて関係無い。車も関係ない。財布の中身もそのクソみたいなブランドも関係無い。お前らは歌って踊るだけのこの世のクズだ。」
「なんでもできる自由が手に入るのは、すべてを失ってからだ。」
「長いはずだった俺の人生の持ち時間も、いつかはゼロのなる。」
「完璧を目指すのはよせ。それより進化することを考えろ。」
 

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この作品の主人公に名前がありません。
 
最後のエンドロールも”ぼく”を演じるエドワード・ノートンにはただ「ナレーター」と役振りされています。主人公はほかの誰でもない君であり、私なのです。
 
映画のラストでぼくは言います。
 
「大丈夫。これからはすべてがうまくいく。」
 
その悲しいハッピーエンドに見る人は突き動かされるでしょう。
 
エンディングテーマは、PIXIESの名曲「WHERE IS MY MIND?」
 

 
 
最後に念を押しておきますが、この映画にはグロテスクな描写が多々あります。
(なんと!作中で人は一人しか死なないのに!)
 
また、映画の終盤でフィンチャー監督独特の"アソビ"が入るのですが、それはテレビ版ではカットされてしまいます。まだ見ていないけれど、FuluやNetflixなどのオンデマンドサイトで配信されているものはノーカットらしいです。(ほんまか?)
 
また、"アソビ"と言っていいのかわからないですが、DVDなどで映画本編を再生する際に良く「FBI WARNING」(違法コピーを警告する文章)が出てくるあの部分が、ファイトクラブにはさらにこの後に次のような文章が画面に出ます。
 
 
If you are reading this then this warning is for you.
Every word you read of this useless fine print is another second off your life.
Don’t you have other things to do?
Is your life so empty that you honestly can’t think of a better way to spend these moments? 
Or are you so impressed with authority that you give respect and credence to all who claim it? 
Do you read everything you’re supposed to read? 
Do you think everything you’re supposed to think?
Buy what you’re told you should want?
Get out of your apartment. 
Meet a member of the opposite sex. 
Stop the excessive shopping and masturbation. 
Quit your job.
Start a fight. Prove you’re alive. 
If you don’t claim your humanity you will become a statistic. 
You have been warned….Tyler
 
もし、これに君が気がついたのなら、これは君宛ての警告だ。
こんな高画質な画面でいちいち全文読んでたら、時間の無駄だぞ。
他にすることはないのかよく考えろ。
それでもまだこの警告を読むほど暇なのか?
あるいは君は力あるもの誰しもに敬意と尊敬を抱くのか?
読むべきものはなんでも読むのか?
考えたほうがいいことはなんでも考えるのか?
必要だと言われればなんでも買うのか?
いいか、今すぐ部屋を出るんだ。
異性に会え。
消費するな。マスターベーションもやめろ。
仕事をやめろ。
喧嘩を始めろ。生きていることを証明しろ。
自分で自分を主張できなきゃ腐っていくだけだ。
いいか、俺は警告したぞ。-タイラー
 
 
 
 
大好きな映画。
ぜひ、見てほしい。
人生を妥協してる君に。