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「少女邂逅」を見てきた感想を書いた。

 

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かいこう【邂逅】

 
( 名 ) スル
思いがけなく出会うこと。めぐりあい。 「三年振りで-した二人は/それから 漱石

 

どうも、 @dn0t です。

 

映画「少女邂逅」を見てきました。

監督の枝優花さんは僕の小学校の同級生です。


これは先に断っておきますが、これからダラダラと書き連ねていく感想文みたいな駄文は多少同級生補正みたいなものが混ざっているかもしれないです。

まあ、その辺は了承していただきたい。

 

……補正とは言いましたが、記憶力の悪い僕は実は小学校時代の同級生とかほとんど覚えていません。

まあ、たまに実家に帰っておかんに

「○○さんが結婚したよ」「○○くんはどこそこに勤めてるらしいよ」

と耳の痛くなるような話を聞かされても大抵は「え、誰だっけ、それ」と答えて終わってしまう感じです...。

 枝さんについてかすかな記憶を掘り起こすとすれば、何かいつも笑っていたことと袖が緑のパーカーを着ていたこと、それだけです。たくさん喋ったような気もするし、実際意味のある会話は一言二言しか話していないような気もします。

僕としてはよく覚えている方なのでこの辺で勘弁してほしいです。

 まあ結局何が言いたいかといえば、今日は能無し宣伝身内べた褒めブログを書くつもりはないっすよ、ってことです。(結果的にそう読めたとしても。)

 

 

今回のクラウドファンディング上映会会場のアップリンク渋谷には初めて行ったんですが思っていたより狭い会場。ちょうど箱のサイズ的にはよく行っていた東北大の演劇部の公演会場くらいだったかな。

まあ、いいかそんな話は。

 

相変わらずの遅刻グセで、会場に到着したのは上映開始ギリギリのタイミングでした。席はすでに結構埋まっていてうろうろしているうちに座ったのは普段じゃ絶対座らない最前列。

 

上映の前に主演女優の二人と枝さんの舞台あいあつをまさかの正面で見ることになったんですが、なんだか雨の渋谷を一人で走ってきて服も髪もぐしゃぐしゃで恥ずかしくなってメガネ外して下向いてたから実は何も覚えてません。(今思うと勿体無いねー。)

 

これもどうでもいいか。はい、さっさと映画の感想ね。

 

ーーーーー

 

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まずこの作品は監督の枝さんの実体験が元になってるらしい。

14歳の時の出来事らしいので12歳の中学受験で別れてしまっている僕はもうその頃の枝さんを知らない。

知ってる人の知らない話。そう考えると不思議な感じ。

 

場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)。
極端な精神的ストレスによって一時的に声が出なくなる病気。

 

主人公の小原みゆり(保紫萌香)はその病を背負っている。映画はそんな彼女が同級生3人に林の中で(まああれ群馬の森だよね、きっと)いじめられるシーンから始まります。

 

軽いネタバレだけど、前半の、いじめが辛くてリストカットしようとするも、できないみゆりのシーンの演技がすごく良かったです。場面緘黙症なので驚くことに劇中前半ほとんど主人公でありながら話すことはないんだけど、演技に幅があって表情も使い分けているので見ていて飽きない。

 

しっかりとみゆりの心の弱さが感じ取れて心を持ってかれました。

 

リスカって弱い人間のやることみたいなイメージがあるけど本当に弱いとリスカだってできないんだな、って感じました。

 

世界中で日々起こる喜怒哀楽どのイベントの中でも、自分自身は頭数に数えられてないという現実に向き合えずに自分で自分を傷つけることで、まるで何か起こした気になれる…。

 

リスカって僕の周りではあまり聞かなかったし、縁もない言葉かと思ってたけどこうやってやっちゃう人の気持ちを考えてみると意外と自分の立っている位置からもそう遠くない出来事なんだなって思えました。

 

そう思うとなおさら、リスカができないみゆりの弱さが胸を打つ。

 

物語は、東京からやってきた転校生・富田紬(モトーラ世理奈)とみゆりが出会い、そこで人とぶつかることを知り、人を好きになり、自分で立ちがる力をつけて外の世界に目を向けていきます。

 

友達を見つけて、一緒にお昼ご飯を食べて、一緒にテスト勉強をして、一緒に旅行の計画を立てて、彼氏の愚痴を言い合って…、まるで忘れていた記憶を思い出さんとばかりに。

 

それと逆行して次第にみゆりは掴み所の無さが増していく紬との距離感がわからなくなって…でもそんな彼女にどんどん惹かれていって…、物語は終盤に向けて加速していく、、、

 

ーーーーー

 

…急に雑になったけど極力ネタバレを避けて感想を言うとなると難しいっすね。やっぱり。

 

この映画、改めて配役が良かったと思います。

 

どうやら主演の二人はオーディションの中で選考して選ばれたらしいけど、保紫さんの方がミスiD2016グランプリ、モトーラさんの方はRADの人間開花のジャケットビジュアルで起用された人って時点で、個人的には「で、でたー!オーディションとは名ばかりの事務所既定路線奴!」っていかにも素人みたいなことを最初は思っちゃったわけだけど、今では本当に反省してます。ごめんなさい。

 

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この二人が主演でよかった。

間違いなくよかった。

 

保紫さん演じるみゆりは上にも書いたけど、前半のバリバリのいじめられっ子ポジションから後半にかけて徐々に人間味を帯びていく流れ、それでもまだ何処かぎこちない話し方だったり佇まいみたいなのが感じ取れてすごく良かった。

 

すごいのは、保紫さんの名前でググってみるとまあモデルさんだから数多の写真やら画像が出てくるんだけどそのどれもが今回僕が見たみゆりではない、というところ。

 

 

 

こればっかりは保紫さんの演技力、枝さん含めスタッフ陣の力量に完敗。

 

モトーラさん演じる紬は今を生きようとする力、子供っぽさが溢れている一方で、みゆりも観客も含めて「こっちを見ているようで全然見ていない」感じが魅力的でした。

 

今思い返してみると後半の駅でのシーンの演技は完璧だったと思う。逃げようとして結局逃げられなかった。もうどうでもよくなってしまった笑いとそれでも抵抗しようとする体の動き。これはオチを知った後だと尚更。

 

他の出演陣の演技も隙がありませんでした。

いじめっ子二人も「あ〜いそう〜」って感じがしっかり出ていたし、主犯のショートの子に関しても、昔はみゆりと友達だったのがどこかで歯車がズレてしまって、「いじめる側、いじめられる側」の対岸に立つようになってしまってお互いその違和感を感じながらも生きてる感じとか…。

 

みゆりに出来た友達3人の普通感も物語に余計な要素を混ぜることなく、かといって決して欠けてはいけない役を担っている。

 

……なんか「よかった」とか「すごかった」とかそんなんばっか申し訳ないけど記憶力と同じくらい語彙力もないので勘弁してほしい✌︎('ω'✌︎ )

 

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この物語に対してここまでダラダラと褒めてるんだか褒めてないんだか分からない文章を書いてきたけど、最後にちゃんと思ったことを書くなら、

 

それはみゆりの最後の選択。

 

紬と出会って、ああいう終わり方を迎えて、みゆりは最後東京に出る選択肢をとった。小さな世界から抜け出してもう一度自分と向き合うために。

 

ただ悲しいかな、もう僕もおじさんになってしまって、考えてみればみゆりの5個くらい年上なので、その5年で僕がわかったことは「世界を作るのは場所じゃない」ってことだ。

 

ちょうどこのあいだ東京女子図鑑を見直してたから思うんだけど今いる世界を飛び出すには生きる環境を変えるだけじゃダメだって事。

 

環境を変えることで僕たちは外界との境目を感じ取ることはできてもそこで出会う誰かが中身を埋めてくれることは決してない。

 

繭の中でカラカラと音を立てるサナギ。

早くその手に何を持たないと、飛べない蛾になるしかない。

 

痛覚があるのなら僕たちは率先して痛がったり苦しんだりするべきなのだ。

 

きっと、おそらくだけど、この物語は枝さんの18歳の時の出来事と重なる部分があって、彼女自身が今こうしてメガホンを持って(本当に今時の映画監督がメガホンを持つのか知らないけど)映像を撮っているように、みゆりも東京に出てそこで何かを掴まないといけない。

 

その何かを掴んで立って前向くってのが本当に難しいんだけど、紬と出会ったあとのこれからならきっとみゆりは前を向けるんじゃないかな、と。

 

これもネタバレだけど最後のみゆりのリストカットの意味は、決して弱さを表現した買ったのではなく、「紬という蚕」と「みゆりという蚕」、本来養蚕には必要なはずの壁は取っ払われていて、二人が成長していく中で絡み合ってしまった生糸と生糸、これを断ち切る意味があのシーンには込められていたんだと思いたい。

 

そう信じたい。

 

 

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ここからは僕の個人的な、映画と全然関係ない話。

面白法人カヤックで働くようになって、うちの経営理念でもある「つくる人を増やす」って言葉が最近事あるごとに頭をよぎる。

 

www.kayac.com

 

そこで今日感じたのは「つくる人を増やす最短にして最高の方法は自分が何かをつくるという事」。

 

今日映画を見て僕が一番に思ったのは「悔しい」という感情でした。

同世代のしかも知ってる人がめっちゃ面白いもん作ってる、それだけで次にまた自分が何かをつくる原動力としては十二分すぎる気がする。

 

それだけでクラウドファンディングしてよかったなと思えた作品。

いやほんと、お世辞とかではなくね。