みなさんは、普段どうやって映画と出会うだろうか。
雑誌?ネットニュース?テレビ?SNS?口コミ?
過程はどうあれ、僕たちは誰かに勧められて映画を知ることが多い。
映画に限らない話。
音楽だったり、漫画だったり、小説だったり、お店だったり…
「最近フラれたんだけど、おすすめの泣ける映画とかある?」
「電車で長旅するんだ。さらっと読める推理小説が知りたいなぁ」
「ワンオクロックが好きなんだけど、似てるバンドでいいのある?」
そんな具合に能動的に僕たちは新しいコンテンツを知っていくことが多い。
でも、時として受動的に知った作品の方が思い入れが深くなることがある。
運命みたいなものをそこに感じるからだろうか。
僕が今回紹介する「ザ・エージェント」という映画もたまたま「金曜ロードショー」で放映しているのを見て知った。
あらすじはざっとこんな感じだ。
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スポーツエージェントとして、活躍するジェリー・マグワイア(トムクルーズ)は、あるとき高価な年棒だけを求める会社の方針に、疑問を持つようになる。
あることをきっかけにその疑問は確信へと変わり、思い立った彼はある「提案書」を書く。
しかし、その提案書がきっかけで、彼は会社から追放されることとなる。
全てを失った彼についてきたのは、会社の事務の冴えないシングルマザー・ドロシー(レニー・ゼルウィガー)と、態度のデカさと態度の悪さが目立つ落ち目のアメフトプレイヤー・ロッド(キューバ・グッディング・Jr)それと金魚のみ。
初心に帰ったマグワイアは今一度自分が求める「仕事」「友情」「恋愛」の理想を探し始める。
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まとめてみると、こんな感じ。
率直に言おう。
つまらなそうなあらすじである。
ありそうな設定だ。
映画のポスターもトムクルーズの横顔アップで何の映画が一目でわからない。
レンタルビデオショップに出向いてまで手に取ることは決してないだろう。
「でも」だ、ちょっと待ってほしい。
この映画で重要なのはストーリーではない。
出てくるキャラクターにこそ、その真髄はある。
話を少し変えよう。
この映画の監督、キャメロンクロウをご存じだろうか?
...では質問を変えよう。
「あの頃ペニーレインと」という映画をご存じだろうか?
知らないのなら、今すぐブラウザをバックしてTUTAYAに行ってほしい。
まあ、この作品についてはまた別の記事でちゃんと取り上げるつもりだが、この映画もキャメロンクロウが指揮を執っている。というか、彼の原体験が脚本のベースとなっている。
そう、彼こそあの映画に出てきた若干15歳で世界一のロックバンド雑誌「ローリングストーン誌」のライターとなった伝説の男なのである。
「ザ・エージェント」は「あの頃ペニーレインと」の5年前の作品なのだが、当然BGMはそういった経緯もあり、名だたるロックバンドの名曲がずらりと並ぶ。
ブルース・スプリングスティーン、ポール・マッカートニー、ボブ・ディランetc…
彼らの楽曲が嫌味なく、並ぶのだ。とんでもない。
話を戻そう。そんな素晴らしい楽曲にのせて、登場人物たちが発する言葉はまるで嘘がないように聞こえる。
仕事に対しても、友情に対しても、愛情に対しても、だ。
それは、一曲の歌詞を聞いてるような感覚である。
契約が思うように取れず、自信を失ったマグワイアに向かってロッドが言ったセリフ
「俺は、お前についていく。俺たちはずっとひとつだ。」
仕事と恋、その折り合いをうまくつけられなかったマグワイアが決心してドロシーに告白したセリフ
「君が僕を完璧にさせる。」
臭いのだ。でも、その臭さがいいのだ。
実際この映画は1996年のアカデミー賞を総なめする。
所謂映画好きな人たちにはあまりウケが良くない(ように思う)。
キャメロンクロウが嫌いという人も多いし、好きだとしても「あの頃~」を絶賛するばかりで他の作品が話題に上がることは少ない。
でも、僕はすごく好きだ。
映画に詳しくない僕だから好きなのかもしれない。
最後に劇中で随所に挿入される伝説のスポーツエージェント・ディッキーフォックスのセリフで締めよう。
「(エージェントという仕事の)原点は人間関係だ
心が空っぽなら、この頭脳に価値はない
愛がなければ、仕事はできないのだ
…こう語る私も人生で幾度となく失敗してきた
でも、妻を愛し、人生を愛している
キミにもそういう成功がやってくることを願う」
(余談だが、邦題は「ザ・エージェント」じゃなくて「ジ・エージェント」のほうが正しいんじゃないのかな?と思ったり思わなかったり…ちなみに原題は「Jerry Maguire」主人公の名前を取っただけ…ん~なんだかなぁ~)