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TheMirraz『印税の話』を読んで思ったこと。

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まずはこちらのブログをご一読いただきたい。

 

まず最初に断っておきますがThe Mirrazというバンドについて僕はあまり客観的に話せません。デビュー当時からのファンで、CDもずっと買っています。自然とMirrazの肩を持つような発言もあると思いますが、ご承知いただきたい。

 

世間一般からすればThe Mirrazというバンドは未だにArctic Monkeysのパクりという印象かもしれません。(そもそも「誰だそれ」が大多数なのは承知の上)

まあたしかに「なんだっていい///」は「Old Yellow Bricks」まんまだし、「給付金もらって何買おう?」は「Fluorescent Adolescent」まんまなんだけど…。

 

 

 

でも当時の彼らの凄かったところって「え、こんなかっこいい曲が世界にはあるのに、なんで日本人はやらないの?」っていうそれまでタブーというか誰も選ばなかった手で音楽業界に切り込んでいったことだと思います。

当然、当時(およそ2008,2009年あたり)は、まだ今ほどTwitterFacebookが活発じゃなかったので、2chを中心にボロクソに言われていました。実際に僕自身もThe Mirrazのことは2chで「アクモンのパクりバンド乙wボーカル顔見えねぇよwww」みたいな書き込みで初めて知りました。いったいどんなくそバンドなんだろう、とNECESSARY EVILを借りてきて聞いたときのインパクトは未だに忘れられません。

初めてBLUE HEARTSの「未来は僕らの手の中」を聴いた時と同じくらい感動しました。マジです。

NECESSARY EVILには先ほど出した「なんだっていい///」や「給付金もらって何買おう?」とかやっぱり当時のイギリスのロックシーンを代表するサウンドがふんだんに盛り込まれた楽曲が多いです。「パクり」と一言で切り捨ててしまう気持ちもわかります。しかし、畠山氏の早口でまくしたてるラップと意外と重いテーマを歌っている歌詞は、まだ中坊だった僕を「なんだこれ、日本人やべぇw」と当時の狭い邦楽知識の枠をぶっ飛ばしてくれる着火剤となりました。

 

何より冒頭のブログでも触れられている「check it out! check it out! check it out! check it out!」を聴いた時の衝撃。

あー曲が生まれないって出来たのがこの曲

決してパクリじゃございません

そんな裏話はロッキンオンですればいいって?

そうです、僕はただの泥棒です

シャムネコチシャネコ泥棒ネコ

もうなんとでもお好きなようにお呼びくださいませ

まあ、文字読んだところでわかりませんよね。

さてMirrazは知らないけど音楽には詳しいよ、って方ならこの曲の元ネタが何かははっきりわかると思います。歌詞でも触れられていますが、ビースティボーイズの「Ch-Check It Out」です。

 

ここから今日の本題に入るわけですが、この曲の印税がそっくりそのままビースティボーイズの事務所に入っていたそうです。The Mirrazの知らないところで。

 

おっとこいつはビースティボーイズ?

こいつは引用です ガタガタつまんないこと言うなよ?

なんなら作詞作曲はマイクD 印税だって差し上げちゃって

2パーや3パーの印税なんか

いらねーくだらねーなめんなふざけんな

名誉、マネー、目当てにバンドやってんじゃねーんだよ

そんなもんは燃えるゴミの日にぽいだ

 

たしかに歌詞にはこうあります。ですが、ブログで畠山氏も語られているようにこの歌詞の真意は「楽曲パクっても金払えばいいでしょ」というスタンスではなく「すべての音楽はパクりなんだ、それにビビッて音楽の進化の流れを止めたらダメだろ」といった趣旨のことを歌っているわけです。実際本人が言ってるようにサンプリングはおろか歌詞も演奏も全くのオリジナル。こんなこと改めて文字に起こしてしまうのも恥ずかしいほど当たり前なんですが、どういうわけか出版社は歌詞の通り「2%や3%の印税なんか」をビースティボーイズに払っちゃったわけですね。

まあ、出版社サイドの言い分もわかるところで、古いところだとORANGE RANGEのロコモーションなんかもパクったパクッてないで大揉めして結局クレジットに「作詞・作曲:Carole King / Gerry Goffin、日本語詞・ORANGE RANGE」と入ったことがありましたし。本件の場合ももろもろの都合で権利関係のお金は消えてしまったわけです。

 

僕からすれば「神になれたら」のテーマのほうがよっぽど畠山氏は野田洋次郎にお金を払ったほうが…(自粛)

 

正確な時系列はわかりませんが結果的に「NECESSARY EVIL」がリリースされた2009年から1年半後にThe Mirrazは「KINOI RECORDS」という自社レーベルを立ち上げることとなりました。

(実はこの機関の間にThe Mirrazはメンバーの引き抜きやなんだで周囲のバンドとくっそ揉めてるんですが、本題と関係ないので飛ばします。詳しくは ➡ http://togetter.com/li/42390

さて、バンドはその後4人体制となり「We Are The Fuck’n World」という僕の大好きなミニアルバムを出して活動していきます。そして翌年2012年に問題の4thアルバム「言いたいことはなくなった」を出します。

 

この4thアルバムの印税が一銭も本人たちに入らなかったというのが今回初めて(?)ファンには露わになった新事実なわけですが、今回はそれをもう少し詳しく見ていきましょう。

 

基本的にミュージシャンが音楽を作るときにかかわるのは...

①レコード会社(レーベル)

音楽出版社

③芸能プロダクション

の3つです。①がCD(商材)ビジネス、②が著作権ビジネス、③がタレントビジネスをそれぞれ担当してマネージメントしています。

 

アーティストがCDを出すとき、楽曲の権利は多くの場合契約上、音楽出版社(そしてJASRAC)が有しており、レコード会社がCDを出す場合は印税を出版社に支払わなければなりません。今回の場合、KINOI RECORDSは自社レーベルなので自分たちで自分たちの楽曲をCD化するために出版社にお金を払います。入れ子構造みたいでややこしいですね。その代りCD売り上げの半分はレコード会社に入る仕組みです。

 

さてここからは今回僕も上のブログを読んで初めて知ったのですが、出版社への楽曲登録は曲単位はもちろん、アルバムやシングルの商品単位でも契約しなければならないようです。そうでなければ先ほど話したCD売り上げ分の印税はレコード会社に入ってこないわけです。しかし、タイミングの悪いことにこのことに畠山氏が気が付いたとき(正確にはCDは発売から1年近くたっても印税が振り込まれていないことに気がついたとき)はKINOI RECORDSが解散してEMIへの移籍が決まった後のこと。結果としてアルバムの売り上げとしてはThe Mirrazのそれまでのアルバム最高記録を誇った「言いたいことはなくなった」の印税は闇に消えてしまったわけです。畠山氏はこの件で訴えを起こそうとしましたが、先ほども言ったようにすでに著作権JASRACが持っているので不可能、八方ふさがりとなりました。

その後も尽くせる手はすべて尽くしてダメだったようです。

音楽活動って「メンタル」が一番大事な仕事だと思うんです。自分でそういう「メンタル」をコントロールしてあげないと、続かなくなるので、僕は諦めることにしました。

 

この件に関しては各方面から意見が出ています。

 

 

  

たしかに畠山氏のブログを読んで「悪い大人たちに騙された!」「音楽業界はくそだ!」と読み取ることも可能でしょう。「結局自社レーベルの権利周りを自分たちで管理できてなかったって話だろ」と言われればそれまでです(というか、そうとるのが普通?)。

でもやっぱり僕はファンだから畠山氏が苦戦しながら今の音楽業界と戦ったこと、そしてそれを恥ずかしげもなくこうしてネットに発信していることをファンとして誇りに思います。

 

音楽業界が悪意に満ちているわけでは当然ありませんが、それでもアーティストが満足して暮らせる保証は現在の業界のシステムだと(紅白歌手にでもならない限り?)限りなくゼロに等しいという現実を学びました。BECKの川久保さんみたいな人ばっかじゃないってことですね。

 

ちなみにこの「印税の話」にはこれらのネット上の反応を見て追記が出されています。


こちらも併せてお読みください。

 

 

 

アーティスト周りのお金の話は素人には複雑すぎて今日ここで書いたこともいくらか間違っているかもしれませんが、その際はご指摘いただければ修正したします。 

以上です。

 

NECESSARY EVIL

NECESSARY EVIL

 

 

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