技術評論社から2018年に発売。 発売した当初から僕のTLでは評判が良さそうだった。
しかし、そのときはこのタイトルから
「数学科って集合とかやるんだ〜、ド・モルガンの法則とかかな。位相?ドーナツとマグカップは一緒ですよ、みたいなやつ?」
って感じでスルーしていた。
(私はしがない工学部生だったので応用数学しかやってこなかった。)
まさかそれから数年経って自らの意思で意欲的に買って読むとはゆめにも思っていなかった。
しかし、年初から幾つか数学の本を読み進めてきたおかげで、今となって"集合と位相"というテーマが近代数学から現代数学にかけてとてもインパクトをもった学問分野であることは理解したつもりだ。(このことは「無限のなかの数学」を読んだときにつよく感じた。そのため、あくまで私にとってだが、この本は志賀浩二先生の 「無限のなかの数学」の延長線上にある。)
特に出発点としてフーリエ級数から話に入り、極限や連続性の定義、集合論の成り立ち、実数とは何か、...ε-δ論法あたりは僕も大学でだいぶ苦労した分野だったので、この本を読んで「なるほど、そういう経緯でこの手の議論が大事だったのか」と改めて理解を深めて楽しく読むことができた。
この本は数学科の学生だけでなく、より多くの理工系学生にオススメできるだろう。逆に、数学は苦手だけどトリビア程度で集合論などに触れておきたいという人には不向きだと思う。(そもそもそういう人は導入の熱伝導方程式のところで脱落しそう。)
私は読んで概ね大満足したわけだが、それでも第六章の測度論やルベーク積分のくだりはただ読んだだけというか、はっきりと何か知識が身についた感覚はない。
しかし、私たちが高校で習ったいわゆるリーマン積分では包囲しきれない集合で表される関数というのが数学の世界には無数にあり、それを理解するのにルベーク積分というのが便利であるということは分かった。(もちろん、巷でよく聞くリーマン積分は関数を縦に切り刻んでいくのに対してルベーク積分は横に切り刻んでいく、というふわっとした説明よりは高い解像度で。)
趣味として始めた数学の勉強だが、ひとまずのところ代数学をやっていこうというモチベーションなので、今のところルベーク積分などおそらく大学で教えるレベルの解析学に真剣に取り組む予定はないが、それもこんなふうに勉強を続けているうちに気持ちが変わる時が来るだろうか。もしくはトポロジーなんかを勉強したらまた物理を真剣に勉強したくなったりもするだろうか。
未来に期待するのはタダなので、今は目の前の本を読み進めよう。
「数論への招待」につづく、参考書と読み物の橋渡しとなる素晴らしい本でした。