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ホビー数学06 すうがくぶんか「群論入門」

GW中、特に大きな外出予定はなかったのでもくもくと家で数学をしていた。

今回は、すうがくぶんかさんの「群論入門」の無料講座を紹介する。

この講座は去年の年初に開講されたもので、全体で約6時間と、他のすうがくぶんかさんの講座に比べればライトな部類に入る。

録画なのでリアルタイム性などはなく内容に関しても質問があれば有料で個別対応となるようだ。

公式サイトからの問い合わせ一本でGoogle Driveの共有リンクをいただき、資料と講師ノート合わせて動画を閲覧することができる。

ちなみに、画像にもあるように自前のノートは、以前このホビー数学で動画視聴したヨビノリ先生の群論入門のノートの続きを使った。

無料とはいえ内容に関してどこまで踏み込んで公に書いて良いのか確認はとっていないため、詳しい内容には触れないが、以前のヨビノリ先生の動画や並行して進めている赤雪江とは違った説明が各所でなされているおかげで理解の手助けになった。

特に剰余類を前にして"普通の演算"ができないだろうか、という問いから正規部分群を定義して、剰余群として演算を施す(そしてそれは私達がよく知る合同式の別表現である)という説明はスマートだった。

それからラグランジュの定理を用いたフェルマーの小定理の証明も良かった。

実は以前、私のブログでこの定理を利用した素数判定法フェルマーテストについて紹介している。(こちらの記事

そのときは定理の証明はしなかったので、ここで2つの証明を紹介する。

フェルマーの小定理

フェルマーの小定理は次のように書くことができる。

素数 p と任意の自然数 a が互いに素であるとき、a^{p-1} \equiv 1 \pmod p が成り立つ。

●二項定理と数学的帰納法を用いたやり方(初等整数論的アプローチ)

証明したい主張は「f(x) = x^{p}-xpで割り切れる」と同値である。

素数pに対して二項定理は次のように単純化できる。

(n+1)^{p} = n^{p}+ (pの倍数)+1 - (\ast)

このことを用いて数学的帰納法で題意を示す。

i) x = 1のとき

f(1)=1^{p}-1 \equiv 0 \pmod p より主張は正しい。

ii) x = nのとき

f(n)=n^{p}-n \equiv 0 \pmod p を仮定する。

iii) n = n+1のとき

(\ast)の両辺から(n+1)を引くと左辺はf(n+1)と等しい。

(n+1)^{p} - (n+1) = (n^{p} - n) + (pの倍数)

仮定より右辺第一項も(pの倍数)となるため、

f(n+1) =(n+1)^{p} - (n+1) \equiv 0 \pmod p

(証明終了)

特に難しい式変形などは使ってないが、面白みは少ない。

ラグランジュの定理を用いたやり方(群論的アプローチ)

証明したい主張は「n^{p-1} + p\mathbb{Z} = 1 + p\mathbb{Z} (n + p\mathbb{Z} \neq p\mathbb{Z})」と同値である。

群論におけるラグランジュの定理とは簡潔に言えば

有限群Gと、その部分群H \subset G について、 H の位数は Gの位数の約数である。

というものである。これを使って証明する。

乗法群 ( \mathbb{Z} / p\mathbb{Z} )^{\times}

( \mathbb{Z} / p\mathbb{Z} )^{\times} = \left\{1+p\mathbb{Z}, 2+p\mathbb{Z}, ... , (p-1)+p\mathbb{Z} \right\}

であり、その位数はp-1である。

さらにこの中からある元 a \in ( \mathbb{Z} / p\mathbb{Z} )^{\times} により生成される群(巡回群)は

 \langle a+p\mathbb{Z} \rangle = \left\{a+p\mathbb{Z}, a^{2}+p\mathbb{Z}, ... , 1+p\mathbb{Z} \right\}

となり、これは ( \mathbb{Z} / p\mathbb{Z} )^{\times} の部分群である。

その位数kラグランジュの定理よりp-1の約数となる。つまり、

a^{k} + p\mathbb{Z} = 1 + p\mathbb{Z}

k = (p-1) を代入すれば主張と一致する。

(証明終了)

証明にしては用語の定義とか説明が雑だが、とりあえず私は、上記のような1つの事象を説明するのに複数のアプローチがあることを学ぶとき、一番脳汁があふれる。

これは数学に限ったことではなく。

夏の砂浜で泥山を作り、両方から山を崩さぬよう掘り進めて互いの指先が触れたときの感動みたいなものを学問に求めている。