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ホビー数学07「ベッドルームで群論を」

まずはじめに、この本は群論の本ではない。無論、代数学の本でもない。

アメリカの科学雑誌のコラムニストが25年間書きつづけた数多の文章から選びぬかれたエッセイ選集である。

私が独りでやっているこのホビー数学の活動には、今までこれと言ってルールは設けてなかったが、それでも一応、学習の参考になるような小難しい専門書や動画コンテンツを中心に取り上げてきた。

したがって今回のようなエッセイ集は対象から外すべきかとも考えたのだが、第1章を読み終えるころにはその気持ちはすっかり切り替わっていた。

まずわかりやすい指標として伝えたいのは、このエッセイ集の巻末には参考文献が16頁に渡って箇条書されている。(専門用語や学者の名前も8頁にわたって索引にまとまっている。)

要するにガチなのだ。

著者のブライアン・ヘイズ氏は、もともと年少の頃から物理学者か海洋学者にあこがれるような好奇心旺盛な子供で、学生のときたまたま単位の問題で文系に進まざるを得なくなり、新卒?で新聞社を経て、そこから書評などを書くライターとして頭角を現し、そして科学専門誌でエッセイを掲載するようになったというユニークな経歴を持つ。

彼が執筆活動と並行して自然科学、中でも数学の分野で自学自習を進めていった結果、各界の学者からクオリティの高いコラムとして称賛されるようになった。(ときには的はずれな計算や論理展開もしてしまうが、有識者からのアドバイスに真摯に向き合う姿勢は尊敬に値する。)

全部で12のエッセイが掲載されているのだが、それぞれで扱う分野は異なる。

せっかくなので索引から本書で重要となるキーワードをいくつかピックアップすると、対称3進数、NP完全、遺伝暗号、カントール集合、巡回群、隠れた変数理論、等価演算子擬似乱数、分水界、(戦争の)マグニチュードファレイ数列、など。

この本が他のいわゆる理数系のうんちく本と一線を画すのは、ただただ興味深い歴史的事実や学際エピソードを紹介するだけでなく、著者自ら問題と向き合い、ときにアルゴリズムを考えたり、図書館へうん十年前の非専門誌を探しに行ったり、手計算した結果をグラフにしたりと、文章の隅々に「科学遊び」に熱中する著者の熱量を感じとることができる。

その貪欲さのおかげで遺伝暗号や分水嶺といった自分に余り馴染みないテーマの文章でも、ぐいぐいと最後まで読み切ることができた。

12の章ごとに逐一、感想をツイートをしていたのでそれを掲載する。

1.ベッドルームで群論

2.資源としての「無作為」

3.金を追って

4.遺伝暗号をひねり出す

5.死を招く仲違いに関する統計

6.大陸を分ける

7.歯車の歯について

8.一番簡単な難問

9.名前をつける

10.第三の基数

11.アイデンティティーの危機

12.長く使える時計