数学を趣味として再開してかれこれ4ヶ月ほどが経つが、いかんせん独学な上に予算も少ないので、購入する書籍には慎重にならざるをえない。
ネットのレビューでは初心者向きとあったのに、読んだらまるでちんぷんかんぷんな内容の群論の本を買ってしまったりもした。
しかし、この本は人との待ち合わせまでの暇な時間に本屋で偶然見つけて買ってしまった。
立ち読みでぺらぺらと頁を捲っていたら、第3章「フラクタル次元」の内容があまりに面白すぎたので急いでレジに向かった。
フラクタル次元については読み終えた後、自分なりに整理&実験した内容を別記事にまとめたのでそちらを読んでいただきたい。
これ以外の他の章についても非常に満足できる内容だった。
特に第4章の「ジュリア集合とマンデルブロ集合」は学びが多かった。
これまでの中途半端な理解では、複素平面上で描かれるフラクタル構造という意味で、これら2つは非常に近い立ち位置にはいるものの、結局は別の村に住む者々くらいの認識であった。しかし、両者の関係はコインの裏表、まるで互いに支え合う友人同士かのような関係であることが、この本で初めて理解できた。
複素平面上でのの反復操作について
の値を固定して出発点をいろいろ試して無限遠に行くものと収束するものとの境界を調べるのがジュリア集合
つまり、マンデルブロ集合はジュリア集合の描く図形の特徴ごとのカテゴリーマップのような役割を果たしているのだ。
https://www.karlsims.com/julia.html
これを正しく理解できると「マンデルブロ集合の境界ぎりぎりのがわかれば、その値でのジュリア集合は連結と全不連結の間にあるような緻密かつ不安定、それでいてかっこいい結果が得られそうだ」ということがわかる。
実際にp5.jsでかっこいいジュリア集合を描いてみよう。
の結果
実は岩波科学ライブラリーは今まで読んだことがなかったのだが、少し調べただけで数学に関する書籍がこれだけ見つかった。
どれも面白そうだし、また買おう。
- 抽象数学の手ざわり: ピタゴラスの定理から圏論まで
- オイラー、リーマン、ラマヌジャン―時空を超えた数学者の接点
- ガロアの論文を読んでみた
- 素数物語: アイディアの饗宴
- 無限
- 巨大数
- 組合せ数学
- <数学>を読む
etc...
それから、この書評記事?では高カロリーと判断してやらないが、時間を見つけて第5章の拡散律速凝集(DLA)もp5jsで実装して遊びたい。
ここからはポエムだが、ジュリア集合やマンデルブロ集合が活躍するジェネラティブアート界隈では「パラメータガチャ」なる言葉をよく聞く(同じような意味の別の言葉でも)。
たしかにアルゴリズムが生み出すランダムさによって偶発的に生まれる美しさや心地よさみたいなものを追い求めてマウスをカチカチしている時間は趣深い。
しかし、背景に何かしら数学的な仕組みがあるとわかっているのなら、まずそれを理解してみようと努力する姿勢は大事だと思う。
(広い意味での)コピペは雄弁だが、決して血肉にはならない。
そこで生まれた偶然の産物を評価することはあっても、たまたまその値を引いただけの人をクリエイターとは私は呼ばない。
これがブーメランとならぬよう、自戒の意味も込めて言葉にしておく。