ついに、読み終えました。
3月中ごろからコツコツと読み進めて、なんとかGW前に。
休日もほぼ毎日向き合っていたので、気分的にはこれでやっと新年度が迎えられるといった感じです。
後にも書きますが、本書は代数的整数論の分野を、いわゆる代数学の知識を持ち出すことなく読み解くことを目的とした、初心者でも取り組みやすい参考書です。
出てくるキーワードは
「完全数とメルセンヌ数」「素数の無限性の証明」「リュカ・レーマーテストとフェルマーテスト」「代数的整数と平方剰余の相互法則」「素因数分解の一意性とイデアル」「チェビシェフの定理と素数定理」等々...
あたりが挙げられます。
リュカ・レーマーテストとフェルマーテストについてはそれぞれ別で記事をあげているのでそちらをご覧ください。
本書の主な特徴は
群、環、体といった抽象代数学に関する知識はほとんどいらない
合同式等は使わずに「××で割って余りが◯◯になる数」といった平易な表現を用いる
よく聞く”(計算式の)行間を埋める”みたいな作業はほぼ必要ない
議論の上で有用な定理については紹介に留めて細かい証明は他書に任せる
などが挙げられます。
この分野の入門書としては大変素晴らしい内容だと思いますが、一方で対象読者がなかなか絞られる参考書だとも思います。
おそらく数学科の学生や先生から見れば代数学の知識を使ったほうが説明がスマートになるだろうという部分も多く、かといってアマチュアレベルの人が「男もすなる数論といふものを〜」と手を出してみるにはなかなか難しいです。
以前このブログで紹介した「数論への招待」の次に読む本として最適なのではないでしょうか。
あの本はいわば数論の啓蒙書、この本はもう少し読者に数学的な脳みその使い方を求めてきます。
読者層が絞られるからと言って悪い本かと言えば決してそんなことはないということは改めて強調しておきましょう。
この分野は一歩足を踏み入れれば知らない言葉や概念が次から次へと出てきて、別の本を読んだりGoogleで検索したりしても、その言葉をまた知らない別の言葉が説明しているような世界です。
(数論自体がいろんな数学の分野の発展と密に連携しあって進歩してきたからだというのも大きいのでしょう。「整数は数学の女王である」とはドイツの天才数学者ガウスの言葉。)
難しい定理の解説はもちろん、その定理があることによってどんな利益がもたらされるかまでをなるべく噛み砕いて解説してくれているという意味で、本書はいわば深い森を歩く際の懐中電灯の役割を果たしてくれます。
最後に、冒頭に挙げたキーワード以外のところで面白かった話を1つ紹介します。
本書ではいわゆる三大作図問題についても解説しているのですが、同じ章で「作図できる正p角形(pは3以上の素数)はどんな値のときか?」という話題が出ます。
かなりアバウトですが、以下の理論の展開でpの条件を導きます。
「正p角形を作図したい。」
正p角形の中心角は .
第1象限にある頂点座標は .
が作図できるか.
ド・モアブルの定理が成り立つことから の解が作図できるか.
の解の実数部、虚数部が作図できるか.
作図できる数の満たす方程式の次数は2のべきである.
これはガウスによって証明されたそうです。
現在発見されているフェルマー素数は の5つなので理論的には正六万五千五百三十七角形はペンと定規とコンパスだけで作図が可能です。
実際に、ドイツの数学者ヨハン・グスタフ・ヘルメスは、およそ10年の月日をかけて正六万五千五百三十七角形の作図法を書き起こして発表したそうです。
…ちなみにこの図形の内角和は11796300°になります。
さて、ガウスはさらに一般の正多角形の作図についてもこれを発展させて証明したそうです。
ピタゴラスの時代から問題提起されていた正多角形の作図に関する問題が、二千年もの時を超えて素数を研究していたガウスによって解決したというのはなんともロマンのある話です。
ノート2冊使っちゃった。
ちなみに次に読む数論の本は購入済みです。