Continue(s)

Twitter:@dn0t_ GitHub:@ogrew

「ないもの、あります」(クラフト・エヴィング商會・著)を読んだ。

 

 

f:id:taiga006:20180210195640j:plain

 「助け舟」

 

「堪忍袋の緒」「自分を上げる棚」「思う壺」「捕らぬタヌキの皮ジャンバー」「転ばぬ先の杖」「目から落ちたうろこ」「冥途の土産」「大風呂敷」 etc ...

 

みんなが知っている、使っているけれど本当はそんなもの、この世には「ないもの」を売っているお店のカタログブック。時に親身で時に皮肉めいていて、なんだか屁理屈っぽい。

挿絵の柔らかい感じも合間ってまるで本当にあるものみたいな、何よりあったらいいなと思わせてくれる内容。

 

「真面目にふざける」ことに正面からチャレンジしている感じが好きだ。

きっと著者は書いていて楽しかっただろうな、と思わせてくれる本はいい本だ。

 

クラウド・コレクター」で有名なクラフト・エヴィング商會・著。

 

クラウド・コレクター―雲をつかむような話

クラウド・コレクター―雲をつかむような話

 

 

思わず手に取りたくなるような、シンプルで変わったサイズ感の装幀も素晴らしい。

(ネタバレだけど読後に帯を外そうとしたら表紙と一体になっていてびっくりした。芸が細かい。笑)

本編ではないけど、巻末の赤瀬川原平氏の「ビール」と「とりあえず」の""言葉の腐れ縁""を綴った書き下ろしエッセイも素敵。

 

f:id:taiga006:20180210200050j:plain

 (とりあえずビール)

 

日本語って面白いな、と改めて思った。

 

ないもの、あります (ちくま文庫)

ないもの、あります (ちくま文庫)

 

 

「1000%の建築」(著・谷尻誠)を読んだ。

一言で言えば、絵本のような本でした。

 

f:id:taiga006:20180204214018j:plain

 

先に断っておくと、谷尻誠さんのことはこの本で知りました。

(お恥ずかしならが…)

なのでこれまでの建築作品とかはほとんど知らずに本書を読みました。

実際、建築家が著者の本を読めばこれまで手がけた作品の写真がいくつかは出てくるんだろうなぁと思って手に取ったんですが、これが全く出てこない。笑

 

冒頭の章で自分の実家の間取り図が出てくる以外は建築家っぽいイラストさえ出てきません。

 

この本はどちらかといえば普段建築家の頭の中がどんなことで構成されているのか、をチラッと覗き込むための作品と言えるでしょう。その意味でいえば谷尻さんはとてもgoodな建築家さんだと感じました。

 

アカデミックすぎない、かといってアーティスティックすぎない、常に枠の外にあろうとする人。ひねくれ者。

 

個人的には「名前が事象の役割を決定づける」という話がいかにも天邪鬼的な発想で共感できるものがありました。

 

f:id:taiga006:20180204212750j:plain

 例えば【コップ】は【コップ】と名前が付いているから何かを飲むための道具として認識されるけど、一度【コップ】という名前を取っ払ってしまえば金魚鉢にも花瓶にもなり得る = 名前が可能性を奪っているという話

 

例えばそれがダンボールであっても【POST】とペンで書いてあげることで郵便屋さんはそこに郵便物を入れてくれる = 名前が可能性を広げてくれるという話

 

THE FUTURE TIMESのゴッチとの対談でも同じ話をしていますね。 


改めて本当に言葉を大切にする建築家さんなんだな、と感じました。

こういった「当たり前を俯瞰で見る」というのは職能関係なくクリエイターであれば必要なことだとぼくは思います。

(現にこの本の中に掲載されている漫画家の窪之内英策さんとの対談でもお互いの仕事に対するこういった類似点が語られていました。)

 

そして何より面白いのが、この本は「読む」という行為、それ自体を「俯瞰で見る」ということに挑戦しています。

 

最初に「絵本のような本」と書きましたが、まさしく「絵本」とは、まだ「読む」という行為自体が当たり前ではない子供が言葉とイラストで物語を理解するためにあるプロダクトです。この本では改めて「読む」とはなんなのか、自分のメッセージを読者により理解してもらうためにはどういった構成にすれば良いのか、本のあり方を谷尻さん目線で【翻訳】した作品と言えるでしょう。

 

僕は、全部を読んだ後に「本当に全部を読んだのか?」とついペラペラと頁を巻き戻してしまいました。笑

 

とってもハッピーな本でした。

 

1000%の建築

1000%の建築