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「みんなの家。 -建築家一年生の初仕事- 」(光嶋裕介・著)を読んだ。

久しぶりの読書の話です。

久しぶりに建築の話です。 

みんなの家。建築家一年生の初仕事
みんなの家。建築家一年生の初仕事
 

 

ドイツ・ベルリンの設計事務所での仕事から帰国して独立したばかりだった建築家の光嶋裕介氏が、ひょんなきっかけからチャンスがやって来た思想家・文化学教授の内田樹氏の自宅を建てるまでの出来事をまとめた本です。

 

「1階が合気道の道場兼、能舞台兼、寺子屋のパブリックスペース。2階が仲間と麻雀をしたり語り合えるようなセミパブリックスペースとプラベートスペースが融合した空間」

武家屋敷のような家にしたい。」

 

この一件無理難題とも言える注文に、建築家1年生(更地からの一軒家建設については当時、初体験だった)光嶋裕介氏がいかに答えていくのか?が主なストーリーです。

 

読み終わって感じるのはアベンジャーズ感とでもいうのか...あるいはワンピース的なものと言えばいいのか...とにかくこの凱風館(内田氏の自邸の名前)はいろんな職人たちが協力して、プロとプロの技が融合してできている。そのことが最高にカッコいい、ということです。 

そして何よりチームの最年少にして「凱風館」建築事業におけるマエストロ(本の中で建築とオーケストラは似ていると書かれています)である光嶋氏のものづくりに対する熱い気持ちがビンビンに感じられます。

 

「ものづくりに対する熱い気持ち」という一見曖昧な言葉はどこから感じられたのか、というとそれは随所に出てくる光嶋氏の各職人への多大なる信頼(リスペクト)です。

 

施工者、構造設計者、大工、左官、瓦職人、テキスタイル・デザイン・コーディネーター、画家...

 

建築家は万能人間ではない、一介のアイデアマンであり、実際に手を動かして家を建てていく人たち無くして価値はない(何より圧倒的現場経験が少ない)。門外漢なので多少表現が過大であれど、そのことを踏まえた上で光嶋氏が持つ「絶対に最高の家を建てたい!」という一貫した強い気持ちが読者を引き込み、奮い立たせてくれます。

 

何より仕事を楽しんでいるのが素敵。そうそうこの本にはいわゆる苦労話みたいなものがほとんど出てきません。普通、自分が初めて一軒家を建てるってなったら絶対ミスもするし、人とぶつかることだってあると思います。いや、実際「凱風館」を建てるにあたっても絶対その辺の話はあったはずなのに本書にはほとんど出てきません。

 

それ以上の仕事への愛、共に作る職人たちへの愛のほうが文章にする価値があったのでしょう。

 

それと同時に本当に「縁」というのは大事なんだなー、と感じる本でもありました。ここでいう「縁」というのは本当に偶然の、まさに「運」的な要素を含む一方で、自分がから掴みにいく(そもそもこの凱風館の設計話は光嶋氏が大学の講義で出会った山本浩二画伯に声をかけられて参加した麻雀の場で当時憧れていた内田氏に「建築家としてなんでもやります!」とアピールしたところから始まる)「精神」それこそが大事なんだなー、と。「運」は巡り巡ってやってきたりやってこなかったりするけど「精神」は普段から自分を磨かない限り強くはならない、いざというときに縁を掴みとれない。

 

まだまだ先ですが、いつか自分が家を建てることがあったらぜひこういう人に家を建ててもらいたい、いや一緒に建てたい!なんて夢をもたせてくれる、そんな2018年読んでよかった本ノミネート作品でした。以上。

 

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 (中島工務店サイトより)

神戸市・凱風館 | 作品集

 

みんなの家。建築家一年生の初仕事

みんなの家。建築家一年生の初仕事

 

 

 

(2018.6.5 加筆修正)

 お名前修正させていただきました…。ごめんなさい…。